こんにちは、Fijiです🐎。
前回の嗜眠(しみん)の記事では寝ても寝ても眠たい、という症状について書きました。
この記事は
- 不眠で困っている。
- 薬に頼らず、根本治療したい。
- 東洋医学や鍼灸に興味がある。
- どんな考え方で治療するの?
- 自分でできる対策はあるのかな?
とお悩みの方に鍼灸受診のきっかけになるようお届けします。
Fiji🐎は東洋医学に基づく鍼灸師歴10年以上です。
日々様々な病の治療や予防に取り組んでいます。
私がどんなふうに不眠を東洋医学的に捉え、患者さんの治療をさせていただいているか、同じようなお悩みを持つ皆さんのお力になれるよう、患者さんに説明する時のようにお伝えしますね。
そしてこのブログをご覧になった方が東洋医学や鍼灸を身近に感じ、受診してみるきっかけになれば嬉しいです。
厚生労働省の発表によると、日本人の5人に1人が睡眠に何らかの問題を抱えているとのこと。
誰でも遠足や試験前にワクワク、ドキドキして眠れないときはあります。
でも、以下厚生労働省のサイトからの引用になりますが、
- 長期間にわたり夜間の不眠が続き
- 日中に精神や身体の不調を自覚して生活の質が低下する
が認められた時、西洋医学的に不眠症と診断されます。
人間の体にとって
「寝ること」
「食べること」
「排泄すること」
はとても重要です。
東洋医学で不寐(ふび)または失眠(しつみん)と言います。
陰陽で考えると
前回の記事の復習になりますが、「寝る」ということを東洋医学的に陰陽で考えてみましょう。
人は陰陽50:50のバランスの取れたエネルギーを持っていると健康です。
「寝る」というのは夜、暗い陰の時間帯にじっとしている、という行為です。
「寝る」には人が持つ陰陽エネルギーのうち陰のエネルギーを養う、つまり増やす働きがあります。
まず大雑把に不眠を陰陽で説明すると
暗い時間にじっとしているための陰のエネルギーよりも
明るい時間に活発に動くための陽のエネルギーのほうが多い。
なので眠れない、ということになります。
衛気(えき)の働き
人体の皮膚表面を外邪(外敵)から守ってくれる衛気(陽のエネルギー)という働きがあります。
衛気は夜寝る際に、体内深くに潜り、寝ている間に臓腑や筋骨を栄養してくれます。
ですが、何らかの理由があって衛気がうまく潜れない方は眠れなくなります。
衛気については以下の記事もご覧くださいね。
心(しん)の働き
そして五臓六腑の中で眠りと最も関係の深い臓腑が心(しん)。
西洋医学では心臓は血液ポンプの働きを指します。
東洋医学では心(しん)の働きは
- 「神を蔵す」⇒意識や思考など精神活動を主る(つかさどる)。
- 「血脈を主る」⇒血液を全身に巡らせる。
- 「面色に反映する」⇒心の状態は顔色に表れる。
- 「舌に開竅する」⇒心の状態は舌に変化が表れやすい。
- 「液は汗」⇒心の状態は汗と関係が深い。
など、血液ポンプのみにはとどまりません。
東洋医学では、この心の臓とお体の陰陽や虚実がアンバランスになると不眠が起こると考えるのです。
虚実(きょじつ)については以下の風邪の記事で書きましたが、
人の持つ生命エネルギーにはちょうどよい量というのがあり、
それより少ない状態が虚
それより有り余っている状態を実
と言います。
以下、様々なパターンの不眠について書いていきますね。
陽気や気逆(きぎゃく)が強いパターン
最近とても増えているのが若い方の不眠。
ゲーマーさんやスマホ・PC作業の多い方に多くみられます。
長時間スクリーンやモニター画面を見つめ、ブルーライトをたっぷり浴びながら例えばシューティングゲーム、次から次へ表示される動画を連続鑑賞、就業時間中はもちろん帰宅後も猛烈に頭を使ってPC作業をしていると頭(つまり人体上部)に陽のエネルギーが偏ります。
わかりやすく言うと頭に血が上ったような熱血・興奮状態です。
気逆と言います。
そして気血は全身をくまなく巡るのではなく、人体上部に停滞してしまい、上半身の陽気が強くなりすぎて眠れなくなります。
よくある症状:
目の充血。
舌の先が赤かったりピリピリする。
口内炎ができやすい。
眠りが浅く夢が多い。
動悸がする。
尿量が減ったり色が濃くなる。
排尿痛がある人も。
気逆については以下の頭痛や眩暈(めまい)の記事もご覧くださいね。
精神的ストレスのパターン
長期間、常に精神的ストレスを抱えているとお体の中で気血が停滞し、ひいては熱化する、と考えます。
火や熱は陰陽で言うと陽です。
このパターンでも陽気が強くなりすぎて眠れなくなります。
よくある症状:
イライラする。
ため息が多い。
怒りっぽい。
胸脇部が脹って痛い。
浅眠。
夢が多い。
口の中が苦い。
精神的ストレスがさらに長期化して心(しん)に影響したパターン
先程、東洋医学では心の臓の働きは血液ポンプのみならず、精神活動にも影響すると述べました。
精神的ストレスは最初に肝の臓に変化をもたらしますが、長期化すると心の臓にも影響します。
そして心において心陰不足、心血不足という状態になり陰陽バランスが崩れるのです。
気血と一言で言っても
気は陽のエネルギー、
血は陰のエネルギーで
お互いにバランスをとっています。
でも心陰不足、心血不足になると
陰が足りない=陽気が強くなりすぎる、
という状態になり眠れなくなります。
よくある症状:
入眠困難。
眠っても夢が多い。
寝汗。
動悸。
焦燥感を伴う人も。
過労・加齢・慢性病によりエネルギー不足パターン
連日連夜猛勉強や家事育児、仕事に追われた状態が続いたり、高齢になったり長患いするとその方の生命エネルギーが不足傾向になります。
そしてお体が枯れたような水不足の状態になります。
すると
水が少ない=熱を冷ます水が足りない=お体が陽に傾き眠れなくなります。
へとへとに疲れているはずなのに眠れない、という方もありますね。
さらに悪化すると食欲が低下したりしてエネルギー不足に拍車がかかることもあります。
よくある症状:
寝返りばかりうつ。
夢が多い。
物忘れが多い。
寝汗をかく。
手のひらや足の裏・胸が熱い。
腰痛・膝痛。
食欲減退してくると全身の倦怠感、軟便や下痢。
ひどくなると物を言うのもおっくうになる人がいます。
驚きと関連したパターン
意外に思われるかもしれませんが、ひどく怖い思いをした後いつまでもドキドキして落ち着かない経験ありませんか?
眠れなくなる方がいます。
友人は自宅で寝ているときに泥棒が入ってきて、心臓が飛び出すほど怖い経験をしました。
物を取られただけで命を取られなかったのは不幸中の幸いです。
東洋医学では恐怖体験は「腎をやぶる」と考えます。
腎には生命エネルギーが蓄えられています。
その結果、全身のエネルギー不足で眠れない日が何か月も続きました。
このようにお体の陰陽バランスが崩れてPTSD(命を脅かすような強烈な心的外傷)で眠れなくなることがあるのです。
大地震や台風被害の後眠れなくなる方もいますね。
よくある症状:
怖くて寝つけない。
小さな物音でもすぐに目が覚める。
びくびくする。
口の中が苦い。
上記以外にも様々なパターンや複合パターンがあります。
鍼灸治療では主に滋陰清熱(じいんせいねつ)と言って陰を補い熱を冷ます、という治療をします。
多すぎる陽を治める治療をすることで陰陽のバランスを回復させ、眠れるようにする治療方法です。
ですが、今このブログをご覧の皆さんはご自分で鍼治療することができませんね。
ですから以下をご提案します。
眠れないことはとてもつらいことだと思います。
ですから以下のことを全部やりましょう、とこれ以上ご自分に負荷をかけなくても
大丈夫です。
ただ、いくつかを生活に取り入れてみませんか?
- ベッドに入る時間を一定にする。
- 起床時にカーテンを開けてお日様を浴びる。
- 少し体を動かしてみる。
- ゲームやSNS、動画のやりすぎや観すぎにはご注意。
- 寝る直前までPC操作をしないようにご注意。
- 入浴は早めに済ませましょう。
- (入浴直後は体温が上がって陽>陰になっています)
- 陰を補う食べ物を積極的に取り入れる。
- 例えば山芋やオクラ、納豆などねばねば食材、クコの実、黒豆、黒いキクラゲ、黒米や夏野菜など。
- 陽気を強めすぎる食べ物を控える。
- 例えば味の濃いもの、揚げ物など。(誤解を恐れずに言うと高カロリーなもの。)
- 精神的ストレスをなるべくためこまないように発散する方法を模索する。
- 寝酒は眠りが浅くなったり早朝覚醒につながりやすいので控え目に。
そのうえでお近くの東洋医学をきっちり学んだ鍼灸師の治療を受けてみてください。
大切なポイントですが、東洋医学では睡眠薬服用とは違い、睡眠を誘発することを目的としません。
不眠の原因を解消することで眠れるようにしていきますから、よりナチュラルな眠りを取り戻すことができると思います。
いかがでしたか?
東洋医学ではこんな考え方をもとに、実際にその日そのお体の状態に最適なツボを選んでオーダーメイドの鍼灸治療させていただくんですよ。
お体も頑張りすぎると回復に時間がかかりますから無理なさらないようにね。
このブログでは私の学んだ東洋医学を誠心誠意お伝えしていますが、皆さんのお体の現状を実際に拝見できていないため、上記パターンに当てはまらない場合もあります。
最後までお読みくださりどうもありがとうございました!
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参考:
東洋学術出版社 中医内科学(2009年出版)
燎原書店 症状による注意診断と治療 上巻 下巻