東洋医学で考える排尿障害(出るんだけど編)自分の症状はどのパターン?

鍼灸適応症状

こんにちは、Fijiです🐎 。

前回まで便秘や下痢について東洋医学的な考え方やご自宅でできる対処法・お薦め食材をご紹介しましたが、今回は排泄つながりで排尿障害についてです。

スーパーに行くとパンティーライナー、尿漏れパッド、尿漏れパンツ、種類も豊富でたくさん売られていますね。

YouTube動画で「骨盤底筋運動」と検索するとたくさんの動画が上げられています。

それだけ排尿障害に悩む人がいて需要があるということでしょう。

もちろん高齢化も一因ですが、若い方でも困っている方が増えている印象です。

この記事は

  • 排尿障害(出るには出るんだけど)で困っている。
  • 薬に頼らず、根本治療したい。
  • 東洋医学や鍼灸に興味がある。
  • どんな考え方で治療するの?
  • 自分でできる対策はあるのかな?

とお悩みの方に鍼灸受診のきっかけになるようお届けします。

Fiji
Fiji

Fiji🐎は東洋医学に基づく鍼灸師歴10年以上です。

日々様々な病の治療や予防に取り組んでいます。

私がどんなふうに排尿障害(出るんだけど)を東洋医学的に捉え、患者さんの治療をさせていただいているか、同じようなお悩みを持つ皆さんのお力になれるよう、患者さんに説明する時のようにお伝えしますね。

そしてこのブログをご覧になった方が東洋医学や鍼灸を身近に感じ、受診してみるきっかけになれば嬉しいです。

今回は見出し3~8ににあえて東洋医学の専門用語を残しています。

理由は漢字はアルファベットと違い一文字ごとに意味を持っているため、日本の方には症状をイメージしやすいかな、という老婆心。

ぜひ、離脱せずにお読みいただけると嬉しいです。

  1. 排尿障害
  2. 八綱弁証(はっこうべんしょう)
  3. 尿失禁(にょうしっきん):
    1. 腎の臓が冷えて温めることができないパターン
    2. 肺と消化器系が弱ったパターン
    3. 膀胱に余分な湿気と熱が溜まったパターン
    4. 肝の臓と腎の臓に熱がこもってお体の水分不足パターン
  4. 尿後余瀝(にょうごよれき):
    1. 尿をタンクにためておく力が弱ったパターン
    2. 消化器系の弱りパターン
    3. 膀胱に余分な湿気と熱が溜まったパターン
  5. 小便頻数(しょうべんひんさく):
    1. 膀胱に余分な湿気と熱が溜まったパターン
    2. 精神的ストレスが原因のパターン
    3. お体の水分不足パターン
    4. 尿をタンクにためておく力が弱ったパターン
    5. 肺と消化器系が弱ったパターン
  6. 夜間多尿(やかんたにょう):
    1. 腎の臓が冷えてお体を温めることができないパターン
    2. 腎の臓が冷えてお体を温めることができない上に消化器系も弱っているパターン
  7. 小便清長(しょうべんせいちょう):
    1. 腎の臓が冷えてお体を温めることができないパターン
    2. お体が冷え切ったパターン
  8. 小便疼痛(しょうべんとうつう):
    1. 下半身に余分な湿気と熱が溜まったパターン
    2. 精神的ストレスが高じてメラメラ燃え盛るパターン
    3. 精神的ストレスが原因のパターン
    4. 下半身に流れの悪い血が滞ったパターン
    5. お体の水分不足パターン

排尿障害

成人の一日の尿量は1000mlから1500ml、一回に200-400mlと言われていますが量や回数だけでなく、

  • 尿は正常に生産されて出るけど困っている方、
  • 尿は正常に生産されているけど出なくて困っている方、
  • そもそも尿の正常な生産に問題がある方、

など様々な方がいます。   

まず、今回の記事は尿は生産されて、出るには出ているけれど困っている方向けに書きますね。

八綱弁証(はっこうべんしょう)

東洋医学的に治療をする際、八綱弁証という方法を用います。

症状を表裏・寒熱・虚実・陰陽の8つの基本項目で分析するのです。

まず第1に表裏というのは風邪(表)をひいたせいでその症状が出ているのか、あるいはもっとお体の奥の臓腑の病気(裏)なのか、という分類です。

「風邪は万病のもと」と言われるように皆さんにとって意外な症状を引き起こすことが多々あります。

風邪については以下、風邪の記事もご参考くださいね。

第2に寒熱

お体が冷えに傾いた結果その症状が出ているのか、あるいは熱に傾いた結果なのか、という分類です。

人の体は寒熱のバランスが取れていると健康なのです。

寒熱という考え方は花粉症の記事もご参考くださいね。

第3に虚実

お体のエネルギー不足なのかエネルギー過多なのか、という分類です。

人の体をサンドバッグに例えてみましょう。

砂が少ししか入っていないとパンチの練習になりませんが、砂が多すぎてびくともしないのも練習にならない、そんな感じです。

虚実という考え方は先ほどの風邪や疲労の記事もご参考くださいね。

Yin-yang symbol

最後に第4は陰陽

陰は水・暗い・静止などのイメージ。

陽は太陽・明るい・活動的などのイメージ。

その病を陰陽で分類します。

前出の裏・寒・虚陰の病

表・熱・実陽の病ということになります。

ご自分の排尿の問題が表裏・寒熱・虚実・陰陽のどれに当てはまるかな、と思いながら読み進めていただけるとご自分の症状をより深く理解できますね。

尿失禁(にょうしっきん):

意識のある状態下で尿を漏らしてしまうこと。

特に女性は尿道が短いため尿漏れがおこりやすいです。くしゃみをしたり、重たい荷物をもって坂道を下っているときにちょろっと尿漏れしてしまったり、尿意を感じた直後に我慢できない尿意の切迫感を感じたり間に合わなかったりすることがあります。

腹圧性尿失禁と呼ばれることもあり

「骨盤底筋を鍛えよう」

と言われますが、筋トレをしている方はご存じのようにそんなにすぐ筋肉は作れませんね。

ちなみに男性は尿道が長いのですが前立腺があり、中高年になってそれが肥大すると尿勢がなくなったり、スッキリ出ずに残尿感を伴う排尿困難が起こりやすくなります。

腎の臓が冷えて温めることができないパターン

慢性病や過労・高齢によりお体の陽気(温める力)が弱った人に起こりがち。

寒がりで手足の冷えが強く、薄い透明の尿が多くなります。

腰や膝がだるい人もいます。

肺と消化器系が弱ったパターン

初めて聞くかもしれませんが、東洋医学では肺の働きで上から下に水分を下すことができると考えます。

慢性の咳や呼吸困難があったり、消化吸収機能が低下して食欲不振やすぐにお腹がいっぱいになる人に起こりがち。

泥状便の出る人もいます。

膀胱に余分な湿気と熱が溜まったパターン

味の濃いものや辛い物、脂っこいものを食べ過ぎたり、暑く湿度の高い環境の影響を受けたりした結果、膀胱に余分な熱が溜まった場合に起こりがち。

発症が急で強い尿意切迫感があったり排尿時に、灼熱感がしたり痛みを伴ったりする人もいます。

肝の臓と腎の臓に熱がこもってお体の水分不足パターン

体の寒熱のバランスが取れていると健康なのですが、なんらかの理由があってお体に熱がこもりすぎると草木が枯れるようにお体の大切な水分が減ってしまいます。

尿量は少なく濃い目。

脇腹に痛みを感じたり、頬の紅潮が見られたり、寝汗をかいたり、耳鳴り、腰痛膝痛の出る人もいます。

寝汗については以下の記事もご覧くださいね。

尿後余瀝(にょうごよれき):

排尿が終わったのに尿がぽたぽた漏れる状態。

尿をタンクにためておく力が弱ったパターン

慢性病過労・高齢・あるいは過度の性行為によりお体のエネルギー不足になっている可能性があります。

寒さで増悪・頻尿傾向、尿量多め疲労倦怠感の出る人もいます。

消化器系の弱りパターン

慢性的な不適切な飲食の影響で腹部の働きが低下、その結果、泥状便が出たり下腹部が落ちていくような感じがする人もいます。

壮年の方にも起こります。

膀胱に余分な湿気と熱が溜まったパターン

日ごろから食べ過ぎ・飲みすぎ傾向の方はお体の水はけが悪くなりがち。

お体に溜まっている多すぎる湿気や熱が膀胱に停滞すると尿切れが悪くなることがあります。

尿の色は濃く、排尿時に尿道の灼熱感や痛みを伴う人もあります。

小便頻数(しょうべんひんさく):

昼夜を問わず排尿回数が増えること

排尿量は多かったり、少なかったり。

膀胱に余分な湿気と熱が溜まったパターン

頻尿になったり尿意切迫感が強かったり排尿時に尿道に灼熱感がある人もいます。

排尿が終わったのにぽたぽた滴る人もいます。

尿は色が濃く、量は少なめ。

下腹部に膨満感が出る人、口が乾いたり粘ったりする人もいます。

精神的ストレスが原因のパターン

テスト前になるとさっきトイレに行ったばっかりなのにまた行きたくなる方、いますね。

情緒の変化に伴って症状が出やすいです。

イライラしたり、プレゼンや面接前など緊張に伴って起こる人もいます。

頻尿に加え、残尿感が伴うこともあります。

胸肋部に痛みが出る人もいます。

お体の水分不足パターン

過労や加齢に伴いお体の水分が減ってしまった場合に起こりがち。

尿量は少なめで濃い。

頬の紅潮が見られたり、寝汗をかいたり、耳鳴り、腰痛膝痛の出る人もいます。

尿をタンクにためておく力が弱ったパターン

ご高齢の方、冷え性傾向の小さなお子さんに見られることがあります。

お体を自力で温める力が不足し頻尿になります。

ほら、お体に余分な水分があると冷えるの、想像できますね。

なので頻繁に排尿したくなるのです。

肺と消化器系が弱ったパターン

寒い季節に風邪をひくと肺が弱りますね。

するとお体の水がうまく上から下に降りなくなります。

生ものや冷たいものを食べ過ぎるとお体の温める力が弱り頻尿になることもあります。

薄い大量の尿が出たり、泥状便になったりすることもあります。

過労でさらに悪化してしまいます。

夜間多尿(やかんたにょう):

日中の排尿回数は多いわけではないけれど夜間の排尿回数が顕著に増えること。

陰陽で考えると夜は陰のエネルギーが増える時間帯。

それなのにお体に水(=陰)が多すぎると排出したくなるのです。

腎の臓が冷えてお体を温めることができないパターン

慢性病や過労・高齢によりお体の陽気(温める力)が弱った人に起こりがち。

寒がりで手足の冷えが強く、薄い透明の尿が多くなります。

腰や膝がだるい人もいます。

腎の臓が冷えてお体を温めることができない上に消化器系も弱っているパターン

お体の温める力が弱っている上に、冷たい物・生ものの過食や暴飲暴食・いろいろ思い悩んで胃腸症状がみられる場合に起こりがち。

痩せ・食欲不振・腹部膨満感・泥状便の出る人もいます。

小便清長(しょうべんせいちょう):

尿の色が薄く透明で量が多いこと。

血圧を下げる薬によっては排尿を促すため特に服薬後の午前中に尿量が増えることがあります。

その場合は処方してくださったお医者様に対策を聞いてみましょう。

腎の臓が冷えてお体を温めることができないパターン

慢性病や高齢によりお体の陽気(温める力)が弱った人に起こりがち。

寒がりで手足の冷えが強く、透明の薄い尿が多くなります。

腰や膝がだるい人もいます。

お体が冷え切ったパターン

わかりやすく言うと寒い季節にお体の芯まで冷え切ってしまうことが原因で透明の薄い尿が多量に出ます。

寒がり、温めると症状がましになる傾向。

泥状便が出る場合もあります。

食べ物の味がしなくなる人もいます。

小便疼痛(しょうべんとうつう):

排尿時に尿道に痛み・灼熱感・しみるような痛み・刺すような痛みを感じること。

下半身に余分な湿気と熱が溜まったパターン

脂っこいもの・甘いものの過食や飲み過ぎなどによりお体に余分な湿気と熱が溜まり膀胱機能を障害することがあります。

また、蒸し暑い気候の影響を受けた場合に色の濃い少量の尿が出たりします。

残尿感があったり、口が苦い、乾くなどを伴う人もいます。

この分類の中に尿路結石やある種の血尿お米のとぎ汁のような濁った尿が出る人が含まれます。

精神的ストレスが高じてメラメラ燃え盛るパターン

精神的ストレスが強く、胸が熱い感じがするかたに起こりがち。

なんだか焦燥感がある人もいます。

口内炎ができやすいです。

不眠傾向の方、眠れたとしても眠りが浅い方に起こりがち。

尿の色は濃く、量が少ないことが多いです。

精神的ストレスが原因のパターン

東洋医学では精神的ストレスが強く、深く悩むとお体の中の気血の流れが停滞し、停滞が長期化すると熱化して火になると考えます。

それによる邪熱(お体の中の余分な熱)が膀胱機能を邪魔すると排尿時に痛みを伴う傾向があります。

症状が精神的ストレスと連動する特徴があります。

口が苦い、胸脇部が痛くなる人もいます。

下半身に流れの悪い血が滞ったパターン

大きなけがをした方や、日ごろからお体の中を気血がサーっと巡らず停滞しがちな方には瘀血(おけつ)と言ってレバーのようなドロッとした血塊ができやすくなります。

わかりやすい例では女性なら月経時に血塊が出やすい傾向になります。

唇の色が紫がかっている人もいます。

その瘀血が膀胱機能を邪魔すると排尿時に痛みを伴いやすいです。

お体の水分不足パターン

過労・加齢・慢性病などによりお体の中の陰分(わかりやすく言うと水)が減るとお体が熱傾向になります。

その熱が膀胱機能に影響し、排尿時に熱感や痛みを伴うことがあります。

今回は長くなりましたのでいったんこの辺でおしまいにして「排尿障害(出ない編)」に続きます。

排尿障害(出ない編)は以下をご覧くださいね。

八綱弁証や難しそうな専門用語が出てきましたね。

たくさんの漢字が出てきてうんざりですか?

「結局どうしたらいいの?」とお叱りを受けそうですが、排尿障害と一言で言っても東洋医学的にこんなに種類や原因・症状に違いがあります。

まだまだほかにもあります。

対処法

ご自分の症状が風邪からならまず風邪を治しましょうか。

冷えが原因ならそれ以上冷やさず暖かくしてお過ごしくださいね。

過労が原因なら少し休憩しましょう。

食生活が原因なら温野菜多めの胃腸に優しいお食事にしましょうか。

現代社会の一員として避けられない精神的ストレスが原因なら、ほんの少しでもいいのでご自分の心が楽になるような好きなことに打ち込んでみましょうか。

のんびりお散歩、そんな気持ちにならない、っておっしゃるかもしれませんが、やってみて後悔することはないかも。

いかがでしたか?

東洋医学ではこんな考え方をもとに、実際にその日そのお体の状態に最適なツボを選んでオーダーメイドの鍼灸治療させていただくんですよ。

このブログでは私の学んだ東洋医学を誠心誠意お伝えしていますが、皆さんのお体の現状を実際に拝見できていないため、上記パターンに当てはまらない場合もあることはご了承ください。

最後までお読みくださりどうもありがとうございました!

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参考:

東洋学術出版社 中医内科学(2009年出版)

燎原書店 症状による注意診断と治療 上巻 下巻

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